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昭和40年代前半はレナウン「イエ・イエ」のCMソングを歌ったことで、一時期はコマソンの女王とまで言われた朱里エイコだが、画面の片隅に名前がクレジットされることもなく影の立役者的な存在に過ぎなかった。そのため現在手にとって聴くことのできる朱里エイコのCMソングはそれほど多くはない。

1977年からはキリンビールが発売した「キリン・ブラック」のイメージキャラクターを長期間務め、雑誌広告に頻繁に登場する。また、この商品のTVCMではシングル曲「ジョーのダイヤモンド」が起用されている。

タイアップ曲と言えば、トヨタ自動車が1978年に発売したチェイサーのCMソングに使われた「SAMURAI NIPPON」も挙げられるだろう。

資料をまとめてみると、CMソングの女王と呼ばれたという割にこれだけ?という感が無きにしもあらずである。しかし、朱里エイコが携わった広告についての手がかりが少ないため、その辺はご容赦いただきたい。

  • レナウン「イエ・イエ」

    1967年
    小林亜星CMソング・アンソロジーシングル「イエ・イエ/恋のアングル」もう一度観たい 日本のCM50年

    1967年春頃にレナウンから発売された女性向けにトータルコーディネートされたニット製品「組み合わせニット"イエイエ"」のCM。

    1967年のACC CM FESTIVALでグランプリを獲得、国外のCMコンテストでも賞を受賞しており、日本のテレビCMにとってエポック・メーキングとなった作品である。このCMは「もう一度観たい 日本のCM50年」というDVDで観ることができる。

    作詞・作曲の小林亜星はこの曲について、「今までにないリズム。エイトビートとフォービートが交互に現れるニューリズムだよ。イエイエの商品名はメロディやスキャットでなく、リフというジャズの手法で作ってみた。」と語っているが、今でも充分斬新である。(今井和也「テレビCMの青春時代―ふたりの名演出家の短すぎた生涯 」、中公新書)

    後に改めて朱里エイコの歌としてシングルが発売され、1万五千枚を売り上げ、朱里エイコ初めてのヒット曲となった。現在入手できる音源は、CMに使用されたもの(60秒)とシングルで発売されたバージョン(2分57秒)の2種類がある。

  • 日本ドライケミカル「パロマ消火器」

    1964年頃?
    ラジオCMのソノシート

    消火器の短いラジオCM、いわゆるジングルを収録したソノシートがオークション・サイトに出品されたことから判明した。

    1964年に単身渡米する以前、田辺エイコ名義で吹き込まれた貴重な歌声である。

    作詞は博報堂ラジオCMルーム、作曲は小林亜星とのこと。

  • 日産自動車「スカイライン C10」

    1968年
    スカイライン CMコレクション

    日産自動車がプリンス自動車との合併後に発売した、通称ハコスカと呼ばれる3代目スカイラインのCM。キャッチ・コピーは「ダイナミックファミリーセダン」、「愛のスカイライン」。

    朱里エイコが歌ったものは、スカイラインのCMばかりを集めたDVD「スカイライン CMコレクション」に収録されている。

    スカイラインといえば独特の丸いテールランプが印象的だが、DVDではちょうどその時代のポール・ニューマンを起用した6代目R30型のCMが肖像権の問題で全てカットされている。

  • 不二家「パラソルチョコレート」

    1969年
    小林亜星CMソング・アンソロジー

    不二家のロングセラー商品「パラソルチョコレート」のCMで歌ったもの。

    作詞は博報堂、作曲は小林亜星。このCMソングは「小林亜星CMソング・アンソロジー」に収録されている。

  • S&B食品「メキシカンカレー」

    1969年
    はやし・こば CM WORKS

    朱里エイコとフォー・コインズが歌ったもので、「はやし・こば CM WORKS」に収録されている。

    はやし・こばは、キングレコード時代のシングル「恋のブラックカード/沈む夕陽は止められないの」の作曲を担当している。

  • ブリヂストン「BSラジアルタイヤ」

    1969年
    週刊平凡1969年9月4日号

    音源が残されているかどうかは不明だが、週刊平凡1969年9月4日号には朱里エイコの写真とともに歌詞と楽譜が掲載されている。

    作曲は小林亜星。CMまたは広告のスチールだろうか、長い間時代劇ドラマ「水戸黄門」で渥美格之進(格さん)役を務めた伊吹吾郎の姿も掲載されている。

  • ヤクルト「ヤクルト ブラジル篇」

    1969年
    DAIHATSU 1970 CALENDAR

    作詞・作曲は小林亜星。アストロミュージック出版のサイトで小林亜星の1969年以前の作品のページに記載されていただけだったが、2019年発売の小林亜星楽曲全集「小んなうた亞んなうた コマーシャルソング編」に収録され、遂に日の目を見ることになった。

  • ダイハツ工業株式会社「DAIHATSU 1970 CALENDAR」

    1969年
    小んなうた亞んなうた 小林亜星楽曲全集 コマーシャルソング編

    関係者配布品または懸賞品。

    カバーの寄せ書きには朱里エイコのサインのほかに「しのび泣きの恋」の文字が見られる。

    モデル:青木エミ(2月・4月) 麻生れい子(5月・9月) 加賀まりこ(3月・11月) 朱里エイコ(7月・10月) 杉本エマ(6月・12月) 立花マリ(1月・8月)、撮影:立木義浩、デザイン:ADB、撮影場所:ダイハツ工業株式会社、提供:ダイハツ自動車販売株式会社。

  • 川島織物「セルコンセンス」

    年代不明
    嵐野英彦 CM WORKS

    川島織物のカーテンのCM。

    「嵐野英彦 CM WORKS」に収録されているが、いつ頃歌われたものかは書かれていない。

  • ナショナル「パナカラー」

    1972年
    女性自身 1972年12月9日号

    マイクミキシング機能のついたパナカラー・エバートロンという、ナショナルが発売したテレビの雑誌広告である。"デュエットカラー本番中"というキャッチコピーがつけられている。

    パナカラーとは、ナショナルが1970年代前半に使用したカラーテレビの総称である。また、エバートロンとは、その中のブランド名だった。

    この赤いプラスチックの筐体は、当時のテレビとしては木目調と並んでポピュラーなスタイルだった。

  • 姫路SANYO テーマソング

    1972年11月頃
    宣伝用マッチの外箱を展開した図

    姫路にあったキャバレー?の新規開店に際して配布されたと思われるマッチから判明。

    作詞・作曲は「北国行きで」のコンビである山上路夫と鈴木邦彦。TVやラジオ等で放送されていたのかは一切不明。

    (歌詞)
    あなたと私には 愛がある それは見えない ものだけど 心をゆらす ときめきも めざめた朝の 歓びも あの時までは知らないで 生きていた ラブ.イン.サンヨー ラブ.イン.サンヨー 愛ある世界

  • 日本コカ・コーラ「コカ・コーラ」

    1972年, 1973年
    非売品ソノシート「うるおいの世界」コカ・コーラCMソング集 1962-1989コカ・コーラCMソング集 Super MoreThe Coca-Cola TVCF ChroniclesThe Coca-Cola TVCF Selections'62~'86

    1973年のコカ・コーラのCMソング「うるおいの世界」は朱里エイコと布施明が歌った。どちらの歌唱も「コカ・コーラCMソング集 1962-1989」で聴くことができる。

    DVD「The Coca-Cola TVCF Chronicles」、または選りすぐりの廉価版「The Coca-Cola TVCF Selections'62~'86」には、当時のCM映像「うるおいの世界 森」「うるおいの世界 秋」が収録されている。

    CMソング「うるおいの世界」は作詞が及川恒平、作曲は「北国行きで」の鈴木邦彦。1974年にはサビを残した新バージョンが多数書き下ろされた。

    「コカ・コーラCMソング集 1962-1989」の続編となる「コカ・コーラCMソング集 Super More」では、1972年にTVCMでは西郷輝彦が歌っていた「コークの世界」(作詞:阿久悠、作曲:川口真)のラジオ放送版が収録されている。

  • キリンビール「キリンブラック」

    1977~1978年
    シングル「ジョーのダイヤモンド/オクラホマ・モーニング」シングル「めぐり逢い/陽はまた昇る」

    1977年4月頃から、フジテレビ系の深夜番組「プロ野球ニュース」の合間に朱里エイコが「キャバレー」を歌い踊る60秒CMが放送された。これはラスベガスのフロンティア・ホテルのステージで撮影された。

    シングル「めぐり逢い/陽はまた昇る」のジャケットに使われているのは、このCM撮影の際に撮られたスチールである。

    また、オンエアの期間はわからないが「ジョーのダイヤモンド」が歌われたバージョンもあるようだ。シングルおよびアルバムの発売が1977年の11月なので、その前後の時期から放送されたものではないだろうか。

    販促用パネル週刊文春 1977年9月29日号PLAYBOY日本版 出版日時不明PLAYBOY日本版 1978年11月号PLAYBOY日本版 出版日時不明

    同商品の雑誌広告などには1年以上に亘って数々のパターンで登場している。

    朱里エイコは全くの下戸だったそうだが、キャッチコピーにもある"パンチのきいた"ビールという点で起用されたのではと推測する。

  • トヨタ自動車「チェイサー 2000SGS」

    1978年
    シングル「SAMURAI NIPPON/サムライ・ニッポン」チェイサー2000SGS 雑誌広告1チェイサー2000SGS 雑誌広告2

    トヨタ自動車から1978年に発売された初代チェイサーのマイナー・チェンジ・モデルのCM。キャッチコピーは使用曲と同じ「サムライ・ニッポン」。シングルでは英語版・日本語版ともにエンディング近くで4回「チェイサー」と言っている。

    チェイサーは1977年にマークIIの兄弟車として、日産自動車のスカイラインに対抗して開発・発売された。

    一連のチェイサーのCMに出演した草刈正雄は、「愛のスカイライン」シリーズに出演していた蟇目良に対抗しての起用だったのだろうか、どちらもハーフの売れっ子ファッション・モデル出身という経歴の持ち主だ。

    ともかく、白いスーツを着た草刈正雄と赤いチェイサーが印象的なCMである。

  • 三菱重工「店舗用エアコン」

    1978年
    ホームレコーディング・デモ/タケカワユキヒデARCHIVE SERIES VOL.8画像画像

    朱里エイコがゴダイゴと共演して「Change Up」という歌を歌ったCM。

    作詞は奈良橋陽子、作曲はタケカワユキヒデ。この曲はタケカワユキヒデが歌ったデモ音源ばかりで構成された「ホームレコーディング・デモ/タケカワユキヒデARCHIVE SERIES VOL.8」に収録されている。

    同じ年にはゴダイゴや町田義人と共演した映画『キタキツネ物語』が公開された。

  • 第一工業製薬「モノゲンオール」

    年代不明

    某巨大掲示板に投稿されていた情報から。

    ちょうど朱里エイコがCMソングを歌っていた時期に販売会社の統合・買収が集中していて特定できないため、便宜上第一工業製薬製品とした。

    1969年にミツワ石鹸・第一工業製薬・旭電化工業が合同出資して日本サンホームを設立。1972年にP&Gがサンホームを買収、伊藤忠商事と合同でP&Gサンホームを設立。現在はP&Gジャパンとなっている。

  • マルコメ「マルコメ味噌」

    年代不明

    このCMの情報も某巨大掲示板から。本人がインタビューで歌っていたことを語っている。

    よく知られている坊主頭のマルコメ君が登場したのは1977年以降とのことで、それ以前のCMソングについて詳しいことは分かっていない。

  • S&B食品「HAWAIIAN CURRY」

    年代不明

    「嵐野英彦 CM WORKS」に梓みちよが歌った「S&B ハワイアンカレー」が収録されているが、こちらははやし・こばの作曲。