平凡パンチ 1977年6月27日号より
週刊平凡 1977年7月14日号より
前年、カーネギーホールでのジョイント・リサイタルを成功させて帰国していた朱里エイコ。1977年もアメリカでの活動に意欲を見せていたが、年間スケジュールが決まっていなかったため就労ビザが下りず、已むなく日本での活動に専念することになった。
その第1弾の仕事がキリンブラックのCMで、その時の写真がジャケットに使われているものだ。本人も「わたしじゃないみたいなメークアップ」といっているように、アイメイクや髪型がガラっと変わっている。(週刊少年チャンピオン 1977年4月25日号より)
個人的にはジャケットに使用された獅子舞みたいな顔のカットより、平凡パンチに掲載された右の写真のほうが写真映りが良く躍動感がある気がするのだが、後ろの女性の手に商品が映ってしまっている……残念。
後ろの4人は「サウンド・イン "S"」でおなじみの(ニュー)ホリデー・ガールズのような雰囲気だが詳細は不明。CM自体はラスベガスのフロンティア・ホテルでアメリカ人スタッフによって撮影された。
このシングルから、スリーブの色がオレンジから青に変わった。ワーナー・ブラザーズの傘下レーベルに変更があったというわけではないらしく、レーベルのロゴを並べたデザインはそのままである。
大分前に別れたのか、別れたばかりなのか、今は手が届かなくなってしまった相手(或いは元から不倫か)とばったりパーティーで出くわしてしまったのだろう。出会いの頃を懐かしみ、多少の未練を残しつつも、私は大丈夫よ、新しい愛を探すわ……と吹っ切れている女。このささやかな大人の女の強がりは朱里エイコの"愛だの恋だの"を歌った中では珍しく爽やかな印象が残る。
大まかに捉えればAメロBメロのみというシンプルな構成(コード進行は複雑)。この2つのメロディーがボレロのように楽器やコーラスを増やして盛り上がって行き、クライマックスで転調といったところがグッとくるポイントである。サビがないこの歌でのドラマ表現、朱里エイコの"聴かせる"というところにまで昇華した芸を目の当たりにする感じだ。
この楽曲は作詞に松任谷由実を起用しているというのが目玉だろう。また、作曲にはRandy Edelmanという気鋭のアメリカ人シンガーソングライターを起用。また、アレンジャーを務めた新井英治は、朱里エイコのバックバンドも務めたことがあるカウント・バッファローズで活躍していたトロンボーン奏者である。これら豪華な布陣にも注目したい。
クレジットにはVictor FeldmanやJeff PorcaroやLeland Sklar(Lee Sklar)などの名前が。
Randy Edelmanは、シンガーソングライターを経て、1980年代後半頃から映画のサウンドトラックを手がけるようになった。担当した映画は『ツインズ』『ベートーベン』『ラスト・オブ・モヒカン』『マスク』最近では『幸せになるための27のドレス』など。また、1976年にLabelleが歌ってヒットした「Isn't It a Shame」は彼の作品である。
右の画像はRandy Edelmanのアルバム「If Love Is Real」。本作「めぐり逢い」と同じ1977年に発表されたアルバムで、こちらもやはりピアノ主体の都会的な洗練されたいわゆるAORな作品になっている。参考までに。
この年にJackie DeShannonと結婚。彼女のヒット曲「What The World Needs Now Is Love」は朱里エイコのレパートリーのひとつでもある。
第6回東京音楽祭国内大会のパンフレット
また、1977年6月5日に中野サンプラザホールで開催された、第6回東京音楽祭ゴールデン・カナリー賞選出大会にはこの曲で出場した。
国内大会での受賞結果は不明で、残念ながら世界大会への出場はならなかった。日本から世界大会へ出場したのは清水健太郎、山口百恵、大橋純子、沢田研二の4名。
世界大会のグランプリはMarilyn McCoo & Billy Davis Jr.「The Two Of Us(邦題:ふたりの誓い)」、最優秀歌唱賞にはMaxine Nightingale「I Wonder Who's Waiting up for You Tonight(邦題:愛のゆくえ)」となっている。
本作は、JASRACに「PLAY THE SONG FOR ME」というタイトルでも登録されている。
前作「明日への願い」と同じく山川啓介とHarvey Truittのコンビによる作品である。
全く翳のない希望に満ち溢れた歌詞に、メロディーは元気がもらえそうな軽快なポップスになっている。これは、朱里エイコの作品としては非常に珍しいパターンである。
常々歌で周りを明るくハッピーにしたいと希っていた朱里エイコにとって、この作品は面目躍如となるものだったに違いない。
ところどころで「白い小鳩」以来久々となるパンチ唱法を聴くことができる。
また、イントロなどに使われているコーラスの男声は、おそらくHarvey Truitt自身の声だろう。