ディスコグラフィーの一覧に戻るボタン

パーティーはなやかなる集い

  • 「パーティー はなやかなる集い」ジャケット表面
  • 「パーティー はなやかなる集い」ジャケット裏面
  • 「パーティー はなやかなる集い」ジャケット内側
  • 「パーティー はなやかなる集い」ライナー表面
  • 「パーティー はなやかなる集い」ライナー裏面
  • 「パーティー はなやかなる集い」帯表面
  • 「パーティー はなやかなる集い」帯裏面
  • 「パーティー はなやかなる集い」A面のラベル
  • 「パーティー はなやかなる集い」B面のラベル
  • 「パーティー はなやかなる集い」見本盤 A面のラベル
  • 「パーティー はなやかなる集い」見本盤 B面のラベル

詳細データ

付属のポスター

付属の大判ポスター

型番
L-8020R
発売日
1973/5/25
価格
¥2,000
八坂裕子
音楽
冨田勲
演奏
ワーナー・ビートニックス&ストリングス
録音日
1973年3月~4月
スタジオ
モーリススタジオ、アオイスタジオ
プロデュース
オールスタッフ音楽出版(担当・斉藤裕二)
ディレクター
大野良治、塩崎喬
ミキサー
島雄一
AD
日高逸男
フォトグラファー
青松吉植
写真協力
映画情報(表1・4)
撮影
小林一民
協力
土屋迪子/フォルマインテナー/富士ストア/石井出雄/裸幻/ヤングファンタジー/カンタベリー
発売元
ワーナー・パイオニア株式会社
帯のコピー
海辺の館で、その夜、あけがたにかけておこったことを、みごとにうたいあげたエイコ快心のオリジナル・アルバム!!
豪華カラーポスター付
マトリクス番号
L-8020R-1(A面)、L-8020R-2(B面)

→CD版「パーティー」(ウルトラ・ヴァイヴ)

→CD版「パーティー はなやかなる集い」(ワーナー・イヤーズ 1971-1979)

解説

西郷輝彦「坂道の教会―さよならはいわなかったのに」映画情報 1973年4月号より

ジャケ写の別カット

試聴盤ジャケット裏面

試聴盤は、「パーティー」の音源のみ間に合わなかったため収録されていないという珍盤。

音楽にはNHK大河ドラマやドキュメンタリ、手塚アニメの作曲などで有名な冨田勲、作詞・構成は詩人・エッセイストの八坂裕子によるオリジナルのコンセプトアルバム。本作のアイデアを出し企画を実現させたのはプロデューサーの栗山章。この3人は西郷輝彦による同様の企画盤「坂道の教会―さよならはいわなかったのに」(1971年)を手がけており、その流れで制作されたようだ。

翌日取り壊されるという海辺の館で、懐かしい人が集まっての最後のパーティー。主人公の化粧台の前から帰りの車の中まで、せわしなく移り変わる女性の心情をドラマチックに細かく描写したミュージカルタッチの作品となっている。男性作詞家の描くものとは一線を画すリアルで繊細な女心が見られるだろう。

狂言回しにはシンプルなピアノにディストーションのかかった独特の男性ボーカル、南佳孝の声ではないかとの説も。

この作品はウマい女優さんが一人ミュージカルをしたら面白い舞台になりそうな感じだ。朱里エイコ自身は、1975年に開いた渡米前のサヨナラ・コンサートの中で「華麗なる女」と題して本作の楽曲を披露している。この時は「独りのとき なにかがおこる」と「きまぐれ」以外の7曲を、蓄音機を脇に置くという演出で歌ったようだ。

収録されている中の1曲「ディープ・パープルはどこ?」がレア・グルーブとして人気に火がついたのをきっかけに、2003年にウルトラ・ヴァイヴから朱里エイコのアルバムの中で真っ先に復刻された。この時にノイズだらけの参考音源を提供した気がするが、どういういきさつだったか忘れてしまった。

2011年発売のボックスに入っている同アルバムには、未発表音源「独りのとき なにかがおこる」のインストゥルメンタル版がボーナストラックとして収録されいてる。

このアルバムから、ジャケットの背面下部に"PRINTED IN JAPAN"と印刷されるようになった。

曲目紹介

  • はなやいだ夜

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    これから出かけて行くパーティーのための準備をしながらウキウキしているヒロインを描写している場面である。その一方で不穏な曲調のイントロや、軽快だが決して明るくない全体の曲調がこれから起きるであろう波乱を予感させている。

    越路吹雪

    日本でサンローランといえばこの人。

    ただ1箇所に登場する"サンローラン"という固有名詞が、場面を一際モダンで華やかな雰囲気にしている。同じ年に発表された小川知子のジャズ・ボッサ「女の館(作詞:なかにし礼、作曲:三保敬太郎)」の中にも登場するこのフレーズには、どこか目くるめく魔力のような何かがあるように思われる。面白いことに、"イブ・サン=ローラン"でなく、"サンローラン"であることがポイントなのである。

    Je Rebiens(Worth)、Vent Vert(Pierre Balmain)、Y(Yves Saint Laurent)、Calèche(Hermès)、Ode(Guerlain)、l'Heure Bleue(Guerlain)が並ぶ華麗な化粧台。オー・ド・トワレでもオー・ド・パルファンでもない、これらはパルファン(香水)に違いない。当時、作詞の八坂裕子は香水の名前に興味があったようで、語呂がすばらしくよく並んでいる。

    例えば、"Je Rebiens"を出したウォルトが1920~1930年代に発売した香水5部作が、名前がひと続きの文章になるという面白い趣向で知られているように、発売時期もメゾンもばらばらの香水名を敢えて並べていることには何か意味や共通点でもあるのだろうか。(下の写真は縮尺が適当なのであしからず)

    Je Reviens(Worth)Vent Vert(Pierre Balmain)Y(Yves Saint Laurent)Caleche(Hermes)Ode(Guerlain)l'Heure Blue(Guerlain)
  • アフリカ象とインド象

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲
    実吉達郎「アフリカ象とインド象―陸上最大動物のすべて」James Taylor「YOU'VE GOT A FRIEND/YOU CAN CLOSE YOUR EYES」

    Carol Kingの曲をカバーして大ヒット。

    目的地へと移り変わっていく街の風景と同調するように、次から次へとせわしなく移り変わる主人公の視点や感情の起伏がパーティーへの高揚感を感じさせる曲となっている。

    ところで、パーティーという主題のアルバムの中で、この作品のタイトルだけを見ると、これは一体なんだろうと戸惑ってしまうと思う。

    歌詞の内容や今後の展開から、ヒロインのパートナー(婚約者なのか単なるボーイ・フレンドかは不明)は進化論を研究している学者だということが判明するわけだが、この唐突さがいかにも物語らしく、ワクワクさせる部分である。

    ちなみにアフリカ象とインド象の違いは、体格の大小もあるが、決定的なのは耳の大きさなのだそうだ。

    彼がカーステレオで聴いているJames Taylorとはアメリカのシンガー・ソングライターのことで、「You've got a friend(邦題:きみの友だち)」や「Fire and Rain」が代表作。同じくシンガー・ソングライターであるCarly Simonと結婚していたことでも知られている。

    朱里エイコはセカンド・アルバム「恋の衝撃」で「You've got a friend」をカバーしているほか、次作となるアルバム「ジェット最終便」ではCarly Simonの「You're So Vain(邦題:うつろな愛)」もカバーしている。

    映画「街の灯」のラストシーン

    長らく幻の名作とされていた映画『街の灯』のラストシーン。

    ――すばらしかったわ あのサイレント映画

    1950年代に起こった反共産主義運動(赤狩り)による左翼思想者の追放によって国外退去となっていたイギリスの喜劇王Charles Chaplinは、1971年にフランス政府からレジオンドヌール勲章を、パリ市議会からは名誉市民の称号を与えられている。さらに、1972年の第44回アカデミー賞ではアカデミー特別名誉賞が授与された(第1回でも同賞を受賞)。

    こうしたことから、1972年に世界中でチャップリン回顧ブームが沸き起こり、チャップリンによる一連の作品の他、バスター・キートンなどのサイレント作品群が脚光を浴び再評価された。

  • カナッペ、フォアグラ、キャビア

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲
    写真

    多彩な食材を盛り付けたカナッペ

    華やかな笑いさざめきを想像できるような単純な明るいものではなく、これまた、人々の思惑や何かしらの予感を感じさせるような曲調。板付きの役者がストップモーションしているところに幕が上がっていく様子が目に浮かぶようだ。

    屋敷の主人や名士や友人達との挨拶に余念のないヒロイン。パーティーの描写のある映画では、大抵こういう役回りは裕福だけどお節介なオバサンというイメージなのだが……。

    歌詞に登場するハミルトンとは、独特のソフトフォーカスが有名な写真家のDavid Hamiltonのこと。1971年に初の写真集「Dreams of a Young Girl」を出版し話題になった。1972年には「Sisters」「The Dance」を発表。ここに出てくる"ハミルトンの写真集"とはこの中のどれかだろう。

    ロッド・マッケン(Rod McKuen、現在はロッド・マキューンと表記する)はアメリカの作家で詩人。シンガー・ソングライターとしても活動しており、シャンソン歌手のように朴訥に悲哀を歌う歌手である。日本では、岩谷時子が訳詞し、石坂浩二が朗読した3部作「The Sea」「The Sky」「The Earth」が知られている。

  • 独りのとき なにかがおこる

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    「はなやいだ夜」の楽器編成を変えたバリエーションで始まるモノローグ・ナンバー。

    時刻は午前1時。ご挨拶もそこそこに、男たちは広間で葉巻やブランデーを片手に談義中、女達は別室でお茶にゴシップといった小休憩の時間帯だろうか。どこかで見たような映画のワンシーンを想像してみる。

    ふと気がつけば、傍にいたはずの彼が見つからない。「また始まった!こんなことなら来るんじゃなかった!」とご機嫌真横の彼女だが、そもそも、話に熱中するあまり彼が「やれやれ…」と中座したことにも気づいていないあたり、ステレオタイプのお姫様である。

    ブツブツ言いながら彼を探すうちに、過去の不倫相手に偶然ぶつかってドレスにお酒をこぼされてしまう。すごい偶然だが、こうでないと話は始まらない。

    彼女は男の正体に全く気づいていない。きっと、相手は慌てて片膝をついてドレスを拭っているのだろう、そして顔を上げると……。

  • 哀しい出逢い

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    過去の不倫相手との出逢いから別れまでを情感豊かに描く、ロマンティックで美しい作品になっている。

    周囲から反対されたということから、この関係は公然の秘密だ。

    物語終盤の様子から察するに、彼氏はこの事実を知っていたのではないだろうか。仮にもし男同士が知人だったなら、いわくつきの男の登場に彼氏は微妙な気持ちながら気を利かせたのかもしれない……なんて、勝手な妄想が膨らむ。

    ――今夜は、あの日の続きじゃないの

    「大丈夫、私は今幸せだから……」なんていう風を装いながらグサッと一刺し。昔恋した女に「老けた」なんて言われた男はとてもかわいそうである。

  • ディープ・パープルはどこ?

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    センチメンタルな封印していた過去を想い出しヤケ酒に走るヒロイン。少々荒れ気味の彼女は「ディープ・パープルはどこぉぉぉ!」と叫ぶが、正装のパーティーでハード・ロックは無理がある。

    オルガンの伴奏やスラップ・ベース、ドラムのリズムを前面に出しオブリガードにはブラスやストリングス、跳ね回るようなアドリブのフルートがとてもかっこいい曲である。

    この作品は、1990年代にレア・グルーヴとして注目され、いわゆる和物を扱うクラブ・シーンでは「AH SO!」と並んで人気を呼んだ。

    2012年にはギャランティーク和恵が歌手活動10周年記念ライブで歌ったほか、2013年に渚よう子がアルバム「ゴールデン歌謡・第2集 エロスの朝」でカバーした。曲調が変わるところからはオリジナルのメロディでアレンジして個性を見せている。

    Deep Purple「Smoke On The Water」日本盤

    Deep Purpleの代表曲の一つ

    Deep Purpleとは、イギリスのロック・バンドのこと。途中解散と再結成を経て現在も活動している長寿のバンドである。

    在籍メンバーの変遷によって当然音楽の特色も変わってくるが、ギターのRitchie Blackmoreが在籍した初期の8年間(1968~1975年)がバンドの代表的な時代といえる。商業的に最も成功したのはIan Gillanがボーカルを務めていた第2期といわれる頃で、「Smoke On The Water」などが生まれた時期にあたる。

    丁度このアルバムが発売された翌月の1973年6月29日、日本公演の千秋楽をもってIan GillanとベースのRoger Gloverが脱退。ここまでがDeep Purpleの第2期と呼ばれている。

  • オフィリアのように

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    ――悲しみ吸い込む波の囁き

    別れてから大分時間がたっているとはいえ、やりきれない想いがこみ上げてくるのだろうか。浜辺に繰り出し、渚で波と戯れるというシーンである。

    オープニングのミュート・トランペットとエンディングのフルートが印象的な、流麗でロマンティックな曲になっている。

    John Everett Millais「Ophelia」

    John Everett Millaisによる絵画「Ophelia」(1852年)

    オフィーリアといえば、シェイクスピアの『ハムレット』の一場面、オフィーリアが狂って溺死する場面を描いた絵画が有名。タイトルの「オフィリアのように」からはこれらを連想せずにはいられない。

    と言ってもこの出来事は戯曲中では王妃ガートルードのセリフで語られるのみである。このことが却ってドラクロワをはじめ多くの画家を想像力をかきたて、名作を生み出すきっかけとなった。中でもジョン・エヴァレット・ミレイが描いたものが有名。この絵画に描かれている花々には全て意味が込められており、その花言葉から場面を読み解くのも面白い。

    昔の美しい想い出は死んでしまった、というメタファーなのだろうか。池田理代子原作のアニメ『おにいさまへ…』にも同じような場面があった。

  • きまぐれ

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    「独りのとき なにかがおこる」と同じく、「はなやいだ夜」のもう一つのバリエーションといった感じの作品である。

    曲の進行と共に薄らいでゆく電子音によるアルペジオが、我に返って不安に取り乱している様子から徐々に落ち着いていくまでを端的に表わしているように思われる。

    彼女を探していた彼氏は、驚いたり怒ったりするでもなく微笑んで彼女を迎える。

    そんな心の広さを見せる男に対し、皆の目の前でキスを、胸の上で泣かせて、疲れた、帰りたい……とここぞとばかりに"女"を際立たせている。

  • パーティーは おしまい

    作詞
    八坂裕子
    作・編曲
    冨田勲

    清々しい朝もやの中、車を疾走させ帰路につくという情景がありありと思い浮かぶ気持ちのよい曲。ところどころに挿入されるオクターブ奏法のギターの音や、同じくトランペットのオクターブ和音が印象的。摩天楼が徐々に目前に迫ってくるといった感覚の作品になっている。

    当のお騒がせヒロインは自身の奔放さを反省してはみるものの、パーティーに誘われたらまた行ってしまうと、優しい彼のことなどはそっちのけにして全く懲りていないところが愛らしい。こんなトラブルメーカーは誘うほうも憂鬱というものだが、パーティーの華だったりするから厄介である。

    フィッツジェラルドの小説『華麗なるギャツビー』に登場するデイジーのセリフ"a beautiful little fool (かわいいちっちゃなおバカさん)"を総じて体現しているのが本作のヒロインである。理性や思慮を求められる世界で、思うまま感じるままに生きることはなかなか難しいことだ。このような女性の生き様は、70年代の男女平等や女性の社会進出などのムーブメントなどのアンチテーゼの表れ、逆に、ある意味憧れのアイコンだったのかもしれない。

    世間の罠(ネズミ捕り)に気をつけろ、自由とスピードは別問題……いや、その前に飲酒運転だ。ちなみに、現在のように厳然とした罰則を課すようになったのは2002年頃から。1970年に道路交通法が改正がされるまで、酒気帯び運転の禁止とは罰則のない努力義務で、まだまだ飲酒運転に対する意識がゆるい時代だったのである。