東京音楽祭のパンフレットより。
前年にポール・アンカ、ドン・コスタのプロデュースでアルバム「NICE TO BE SINGING」を発表。その勢いに乗って「サムライ・ニッポン」を引っさげてコンサート活動をしている頃に発売されたシングルである。
ワーナー・パイオニア時代の朱里エイコのシングルの中では最もマイナーな部類と言う印象だが、どちらもなかなかの名曲だ。
ドラマーとしてLenny Whiteが参加している。彼はサンタナのバンドから脱退したメンバーで構成されたAztecaやチック・コリアが中心となって結成したReturn to Foreverに在籍していた。その後はTwennynineやJamaica Boysでの活動が知られている。
この頃のツアーのバックバンドに参加していたのか、レコーディングのみの参加か、詳しい経緯は判明していない。
狙ったイメージなのか、コストダウンなのか、ペラジャケはザラっとしたオレンジ色の紙にカラー印刷をしたものだ。
「サウンド・イン "S"」で歌う。(資料提供:ギャランティーク和恵)
恋に狂った女のリアルな女の心情吐露と、シティポップス的などこか洒落た雰囲気のあるメロウなバラードで、心にしみる一曲となっている。
――瞼にゆれる窓あかり 想ひ出ポルノの窓あかり
今頃別の女を抱いてるのだろうと、誰の部屋かもわからない窓明かりを複雑な気持ちで見上げる女。後ろ髪ひかれる思いに切なくなる。
――気のないくちづけからませて わたしにしたのとおなじように
またその一方で、よその女性にも同じような仕打ちをしているに違いないという想像で溜飲を下げるという、女性の情念というか底意地を感じずにはいられない。
このような表裏一体の感情の鬩ぎ合いや、最後にリフレインされる破滅願望的な言葉がこの作品をリアルにしている所以である、この部分は是非CDなどで聴いて確かめてほしい。
狂ったように惚れぬいた割に半月、残念ながら遊び相手としては重すぎた。碌でもない遊び人に人生を狂わせられるよりも幸せになってほしいと願うばかりだ。
第8回東京音楽祭・国内大会にはこの曲で出場している。パンフレットでは「これまでの朱里エイコのイメージをがらりと変えての登場(後略)」と紹介された。
第7回に出場した時は「ジョーのダイヤモンド」でゴールデン・スター賞を獲得したが、残念ながらこの回では入賞することができなかった。
現在でも「北国行きで」等の有名曲をカバーする歌手は沢山いる中、ミッツ・マングローブ、メイリー・ムーらと共に音楽ユニット"星屑スキャット"として活動しているギャランティーク和恵がこの隠れた名曲を定番曲として歌い継いでいる。
2016年11月には「窓あかり」ほか2曲を収録したミニ・アルバム「ANTHOLOGY#3」を、2019年3月にはそれら一連のミニ・アルバムの中から楽曲を精選したアルバム「カバーコレクション」を発売した。
また「窓あかり」についてのコラムも書いている。
ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第2夜 : 朱里エイコ「窓あかり」にみる女の純情 (GetNavi web)
「窓あかり」に対するちょっとしたアンサーソングだろうか。
――気がつきゃ もとの街の角
星の数ほどいる男と浮名を流したけれど、気がついたらまたあの"窓あかり"を見上げている女……とこじつけてみた。
やさぐれ歌謡とはまた違った、女の自虐と諦めが哀しくなる。それなのになぜかどこかホッとするような不思議な魅力のある作品でもある。
ジャケット裏面を見ると判るが、B面曲「星と女」は歌詞表記が省略されている。発売から30年余、2011年に発売されたボックス「朱里エイコ ワーナー・イヤーズ 1971-1979」にようやく歌詞が掲載された。
梅垣達志はヤマハのポプコン出身で、「お久しぶりね」「今さらジロー」(小柳ルミ子)、「冬が来る前に」(紙ふうせん)、「リメンバー(フェーム)」(ピンク・レディー)の編曲が有名。