「北国行きで」や「心の痛み」で別れの歌ばかりが続いていた朱里エイコは、心の痛手がオーバーラップしてやりきれないと感じており、次の新曲はハッピーな歌がいいと希望したそうだ。(AMICA 1972年10月号)
そこで、音楽の師匠で所属事務所の代表だったいずみたくが新曲を担当することになった。
オリコン最高20位、ランキング登場21週、売り上げ13.8万枚の本作は、「北国行きで」に次ぐヒットシングルで、代表作のひとつである。
この「恋の衝撃」は、フランキー堺と倍賞美津子主演のラブコメディ『快感旅行』の中でプロモーションも兼ねて歌われている。
初めてのライブ盤「オン・ステージ」では新曲として紹介されているのを聴くことができる。また、ライブ盤「NOW ON STAGE」では客席に下りて観客と1フレーズを一緒に歌っているところが楽しめる。といった風に、ライブでも大切に歌われていたことが判る。
食堂車の暖簾を上げて颯爽と登場。エキストラのおば様たちも目のやり場に困る脚線美。
何もかもすべてが夢心地よ、と恋をして盲目になってしまっているかわいい女心を歌う。
一番最初に鳴るディストーション?オーバードライブ?のかかったギターが、一目惚れの衝撃を表している。
このギターの音はあちこちで装飾的に登場するが、本編は軽快でかわいらしい歌謡曲になっている。エンディングのスキャットの辺りなどはのびのびと楽しんで歌っている印象を受ける。
メロディーだけを追っていると、アニメ「サザエさん」のテーマ曲のようなほのぼのとした雰囲気の作品に思えるが、バックにはハードなギターやキレの良いブラスといった要素が随所に散りばめられたロックな作品となっている。
恋の衝撃よりもう一歩踏み込んだ、遍歴のある女がやっと落ち着ける"あたたかい胸"にめぐり会ったというお話。明日別れるかもしれない、ずっと一緒かもしれない、それよりも今のこの幸せを大事にしたい、そんな不安と安堵が綯い交ぜになった心情だろうか。
マイナーコードからサビの盛り上がりと共にメジャーに転調する穏かな三連バラードである。
川口真は、作曲・編曲家。「他人の関係」(金井克子)、「絹の靴下」「お手やわらかに」(夏木マリ)、「人形の家」「ロダンの肖像」(弘田三枝子)、「トーキョー・バビロン」(由紀さおり)などで有名。