中央の衣装がジャケットに使われたものと同じ。(週刊明星 1972年4月30日号より)
「北国行きで」のヒットによりテレビにラジオにと大忙しの1972年夏、3枚目のシングルは前作に引き続いて山上路夫・鈴木邦彦のコンビの作品になった。
大ヒットの「北国行きで」と次回作でヒット作の「恋の衝撃」に挟まれて、影の薄い存在になってしまっている。
4月に一斉に価格改定されたのだろうか、400円から500円に値上げされている。ワンコインで……この時代は500円札だ。消費税で内税外税だの税込み税抜きだの、ややこしいことがない良い時代である。
このシングルから社名表記が「ワーナー・パイオニア株式会社」となる。
新曲発表をかねた「朱里エイコ・NOWコンサート」の様子。(週刊明星 1972年7月30日号より)
愛を失った女が悲しみの淵から立ち上がろうとする歌で、「北国行きで」とは対照的な内に引きこもるヒロイン像を描いた作品である。
全編でハープシコードが使われているのが特徴。イントロがハープシコード・トランペット・エレキギターのリレーになっていて、あっという間に終るが面白い。ロックなギターが各所で申し訳なさそうにしているのが気になる。
――旅に出ますとドアに紙を張って 今は誰とも会いたくないの
傷ついた女心を察してくれといったところだろうか、冷静に考えれば考えるほど滑稽な状況に気を取られそうになる。心に痛手を負った人間の、なりふり構わぬ余裕のない行動にほだされて、涙しそうになる(……かどうかはその人次第)。
せっかくの歌の情緒をぶち壊すようで申し訳ないが、部屋の中にいたとしても女性一人、空き巣に入ってくれと言わんばかりの張り紙は防犯上よろしくないのである。
幸せで仕方ない女が、こんなに幸せでいいのかしら?と幸せをかみしめる歌である。
「心の痛み」があまりに憂鬱な雰囲気なので、口(耳)直しといった意味合いでのカップリングだろうか。このA面B面のイメージ構成は、前作を踏襲したものと言えるだろう。
マリンバの音が南国的というか穏やかな感覚を与えてくれる。素朴なローカルCMといえばこんな音がよく聞けたような気がするが、今となってはあまり耳にすることのない懐かしい音だ。そのほか、ストリングス、ギターのカッティング、跳ねるようなベース、マンドリン、ウクレレ?など、耳を凝らすと豪華な弦楽器のパーティーのようだ。
ところで、牧葉ユミのアルバム「フレッシュ・ポップス」に収録されている曲に同じタイトルの作品がある。作詞・作曲も同じく山上路夫・鈴木邦彦コンビによるものだが、朱里エイコの「青春のときめき」とは全くの別物である。これは、2012年に発売されたCD「牧葉ユミ ゴールデン☆ベスト」に収録された。
牧葉ユミの曲と言えば、スター誕生の予選で山口百恵が「回転木馬」、桜田淳子が「見知らぬ世界」を歌ったことで知られている。