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北国行きで/時の流れにのこされて

  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」ジャケット表面
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」ジャケット裏面
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」ジャケット表面(価格違い)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」ジャケット表面(型番違い)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」ジャケット裏面(型番違い)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」A面のラベル(1)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」B面のラベル(1)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」A面のラベル(2)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」B面のラベル(2)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」A面のラベル(3)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」B面のラベル(3)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」A面のラベル(4)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」B面のラベル(4)
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」見本盤 A面のラベル
  • 「北国行きで/時の流れにのこされて」見本盤 B面のラベル

詳細データ

型番
L-1069R、L-121R(型番が整理されて再発売)
発売日
1972/1/25、1976/11/25(型番改定)
価格
¥400、¥500(価格改定)、¥600(型番改定)
演奏
パイオニア・オーケストラ
発売元
ワーナーブラザーズ・パイオニア株式会社
マトリクス番号
L-1069R-1(A面)、L-1069R-2(B面)

→MEG-CD版「北国行きで/時の流れにのこされて」

解説

写真

ジャケット写真の別アングル (週刊TVガイド 1972年4月14日号)

ワーナー・パイオニアに移って出した2枚目のシングルは朱里エイコ最大のヒット曲になった。朱里エイコとの出会いは、この「北国行きで」という人が圧倒的だろう。

この少し前に雪村いづみのマネージャーをしていた渥美隆郎が母・朱里みさをに紹介され彼女を担当することになる。曲・歌唱はもちろんだが、大ヒットの影に彼のマネージメントの功績は大きいといわれている。

ところで、曲のイメージとはいえ、あんまりなジャケット写真である。顔もむくんでいて別人のようだ。

ジャケット裏面の社名表記が「ワーナーブラザーズ・パイオニア株式会社」となっている。

曲目紹介

  • 北国行きで

    作詞
    山上路夫
    作・編曲
    鈴木邦彦
    写真

    新曲キャンペーンではスキー列車の一日車掌を務め、車内で歌唱指導をした。

    写真

    1972年の大晦日には紅白歌合戦初出場を果たした。

    いつも別れましょうといったけれど――そもそも、こんなことを言わせる浮気性な男もたいがいだが――嫌な女だ。この歌のヒロインは、歌謡曲の定番である遊ばれて捨てられて涙するだけの古いタイプの女ではない、強い女だ。後ろ髪を引かれつつも、三行半も叩きつけずに、とっとと愛の巣を後にする潔さを持っている。なにしろ北だ、これが免罪符。北国の人には失礼かもしれないが、都落ちに"南国行き"では様にならないのである。

    情念が渦巻くような従来の別れ歌とは異なる、意外とサバサバした印象の現代的とも言えるヒロイン像が、軽快に歌い踊る朱里エイコのキャラクターとマッチしてヒットする要因となったのではないだろうか。

    シンコペーションを多用したホーンセクションのイントロ、これが内容の重苦しさやマイナー調の雰囲気を相殺しているように思われる。このイントロは何となくオールナイトニッポンのテーマ曲である「Bittersweet Samba」を思い出させる。

    フォーク的なギターのアルペジオが全編に見られるが、サビになるとパッと止んで、ベースとオルガンメインになるといったようなキレのよい展開を見せる。

    コードには詳しくないのだが、サビのコード[ F C7 Dm Dm7 B♭ D♭ C7sus4 C7 ]がかなり斬新だったのだそうだ。確かに初めて聴いた時に「おや?」と思ったのは、ここのコードが作る雰囲気だったのかもしれない。サビのコード進行[ IVM7 V7 IIIm7 VIm ]に飼いならされてしまったその後の日本人にとっては特に新鮮に聞こえるのだろう(※)。

    ちなみに、TVサイズの歌唱や一部のライブではエンディングに「シャンランラランラ~ラララ~」と歌っていたそうだ。

    ※「JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた」(ニコニコ動画は視聴には登録が必要。YouTubeにもアップロードされている。)…これには賛否両論があるかも知れないが、面白い。

    濱口英樹「ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人」

    「北国行きで」の歌詞については、Jimmy Webbの作でJohnny Riversが歌った「By the Time I get to Phoenix(恋はフェニックス、1966年)」に非常に類似しているという指摘があった。

    2018年に発売された濱口英樹氏による名著「ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人」の中で、そもそもこの歌詞は、出来上がってきた歌詞を「恋はフェニックス」をモチーフにしたものに書き換えさせて出来上がったものである、とプロデューサーの塩崎喬氏本人が証言している。

    歌詞の類似性についていち早く目をつけられた生田倫哉氏のブログを次に紹介する、是非読んでみて欲しい。

    →出不精のピーターパン ニューヨーク・プチニート日記

    チェリッシュ「だからわたしは北国へ/こわれた想い出」

    ところで、チェリッシュの「だからわたしは北国へ」(作詞:林春生、作曲:筒美京平、ビクター)は「北国行きで」と同じ1972年1月25日の発売。

    奇しくも同じ発売日だったのか、何かそういう遊びっぽい企画が業界にあったのだろうか。こちらもなかなかに良い曲だ。

    「だからわたしは北国へ」はデビュー曲「なのにあなたは京都へゆくの」(作詞:脇田なおみ、作曲:藤田哲朗)に続くシングル。セットで聴きたい。

    永田英二「悲しきトレイン北国行き/昨夜の出来事」

    これ以前に、永田英二(フォーリーブスの初期メンバー)が発売したシングル「悲しきトレイン北国行き」(1970年5月発売)というものがあり、「北国行きで」と同じく山上・鈴木コンビによる作品。ジャニーズアイドルらしい青臭い声と寺川正興による元気なベースラインが特徴で、GS歌謡と純歌謡の中間的な雰囲気だが、とてもノリの良い曲になっている。恋に破れて北国というモチーフの走り的なものになるのだろうか。ジャケットはただのイメージ写真だろうが、北へ帰る夜行列車でも、一人乗る青函連絡船でも、東北新幹線(まだ完成してない)でもなく、蒸気機関車だ。ちなみに1970年前半には、折りしも姿を消しつつあったSLを追うように全国でSLブームが起こっていたらしい。

    また、このような旅愁をテーマに恋心を歌った楽曲が増えた背景には、1970年から始められた国鉄(現・JR)の個人旅行キャンペーンである"ディスカバー・ジャパン"の影響が大きいと言えるかもしれない。

  • 時の流れにのこされて

    作詞
    山上路夫
    作・編曲
    鈴木邦彦

    A面の激しさとは対照的で、穏やかで温かい感じの曲。

    どちらにしても大切な人を失った女心を歌ったものだが、こちらは春の陽気の中でぽっかり開いた心の穴にふと寂しさを感じるという曲だ。

    男と別れて北国へ向かった女のその後……といったアンサーソングと捉える見方が出来るかもしれない。穏やかなメロディーラインに対してベースラインが非常に激しいのが特徴になっている。前年大ヒットした堺正章の「さらば恋人」が空耳でなんとなく聞こえて来そうな雰囲気だ。

    前項で紹介した「ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人」の塩崎喬氏の証言によると、当初はこの「時の流れにのこされて」がA面に決定しておりジャケットも準備されていたが、歌詞を書き換えた「北国行きで」の出来の良さからA面とB面を差し替えることにしたそうだ。この交代劇はレコード会社の方針を決定する編成会議を覆して強行された。こうして朱里エイコ最大のヒット作が生まれた。

    山上路夫は、赤い鳥「翼をください」、アグネス・チャン「ひなげしの花」、小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」、佐良直美「世界は二人のために」、野口五郎「私鉄沿線」、由紀さおり「夜明けのスキャット」などの多数のヒット曲からアニメ『ベルサイユのばら』の主題歌など幅広く作詞している。夫人である尾中美千絵もヒット曲の多い作詞家である。

    鈴木邦彦は、大学を卒業後スマイリー小原とスカイライナーズでピアニスト務めたほか、ミッキー・カーチスとシティークローズで活躍。黛ジュンや奥村チヨなど、なかにし礼とのコンビ作にヒット作が多い。たかたかしと組んだ西城秀樹の初期のシングルなども有名。