※右写真はキングレコード時代のコンピレーション・アルバム「歌のグランプリ 第2集」のジャケット裏面の写真から。どちらが正像かはわからないが、反転画像になっている。
漫画サンデー 1967年7月19日号より
デビューから4ヶ月後に発売された、朱里エイコ第2弾のシングルである。
中古レコード市場ではレア中のレア。オークションサイトでも滅多にお目にかかれないシングルで、かなりの高額で取引されている作品である。
デビュー・シングルに引き続き、ボブのウィッグを装着したジャケット写真で、前回との違いは前髪を下ろしている点だろうか。
右写真はシングル発売の直前、7月に発売された雑誌のグラビア写真。ジャケットと同じようなヘア・スタイルになっている。新作の話題には触れられていないが、春に出演したアンディ・ウィリアムス・ショーのことなどが紹介されている。
目玉はB面の「マシュ・ケ・ナダ」。当時のソロシンガーが洋楽を原語のまま吹き込んでシングルを出すのは珍しかったらしいが、どのように受け止められたのだろうか。
デビューシングル「恋のおとし穴」に引き続き、楽曲製作は福地美穂子・すぎやまこういち・森岡賢一郎の3人が担当した。
「アニマル1」の主題歌かと一瞬勘違いしそうになる、やたらと壮大なオープニングから始まる三連バラード。ドラマティックな展開のため、流行歌というよりミュージカルのナンバーといった風情のある曲になっている。
聴いていると、宝塚時代の上月晃や同時代の貫禄ある女役(娘役ではない)の声がオーバーラップしてきそうな作品である。
アルバム「Samba Esquema Novo」
シングルカット版(78rpm)には"Os Copa 5"の名前が
日本版シングルの写真撮影は宮下明義
オリジナルは1963年にJorge Ben(現・Jorge Ben Jor)が作詞・作曲し、自ら歌ったもの。この曲はSergio Mendes & Brasil '66が1966年に取り上げ大ヒット、これに伴ってJorge Benも一躍有名になった。
その後各国の有名アーティストがカバー、ボサノバだけのジャンルに留まらずラテン、更にはジャズのスタンダードになっている。
最近のカバーといえば、2011年に発売された由紀さおり & Pink Martiniのアルバム「1969」に収録されたものが話題になった。このアルバムは全米ジャズチャートで1位を獲得する大ヒット作となり、中でも独特な日本語歌詞の「マシュ・ケ・ナダ」の人気が高かった。
もちろん、朱里エイコのバージョンも魅力的だ。まだまだ若いために直球的な感じもあるが、力強く、伸びやかに、少し音を遅らせながら歌う辺りにムードがある。
ところで、このシングルのジャケット裏面に表記されている「Mais Que Nada」というのはブラジルで話されているポルトガル語のスラングが勘違いされてつけられたタイトルで、「Mas Que Nada」のほうが正しい表記のようだ。
キングレコード時代の音源を集めたCD「朱里エイコ★イエ・イエ レイト60's東京モッド・ガール・コレクション(2)」のライナーでは作詞・作曲にTesta Albertという名前が併記されているが、この人物については詳細が判明していない。
ちなみに、イタリア語バージョン「Non Ti Credo」には、作者としてJorge Benと共にAlberto Testaという名前がクレジットされている。このAlberto Testaというアーティストは、ブラジル・サントス出身のイタリア人作詞家とのこと。オリジナルの時点で携わっていたのか、イタリア語の訳詞を担当しただけなのか、これも詳しいことは判らない。
この音源について。
この音源を収録しているCD「朱里エイコ★イエ・イエ レイト60's東京モッド・ガール・コレクション(2)」は、国会図書館の新館1階にある音楽・映像資料室で聴くことができます。資料の利用には許可申請が必要になります。このCDは廃盤になっていますが、AmazonやYahoo!オークションなどで比較的簡単に入手できます。