曲名にはどちらも「こどもの歌」と冠されている、児童向けのシングルである。
前年にコダマプレスから刊行されたソノシートに歌声が収録されているが、あちらは雑誌。従って、これが正式なレコードデビューということになるだろう。
作詞のさとう・よしみとは、「犬のおまわりさん」などで有名な童謡作詞家・童話作家・詩人の佐藤義美である。
Wikipediaの年表によると昭和37年に交通事故に遭っているとのことで、この作品の企画或いはテーマのきっかけになったのではないだろうか。
当の朱里エイコ自身も後年大ヒット中の短期間に連続して交通事故に遭い、声が出なくなるなどの後遺症に悩まされることになり、逆説的ではあるが因縁的なものを感じる。
ジャケットは混乱する道路事情をイメージしたのか、インク2色と低予算ながら、今見るとなかなかにシュールで斬新なデザインだ。
子供向けのレコードなので、玩具と同じく美品での現存は極稀なのではないだろうか。もし発見されたなら超絶レア音源ということになるだろう、需要があればの話だが。
面白くてかわいらしい歌なので、ビクターに音源が残っているのであれば、是非とも何らかの形でCD化して欲しいところである。
※ジャケット表面では田辺ヱイ子、ジャケット裏面や販売目録では田辺エイ子と表記されている。おそらく誤植で、特別な区別はないと思われる。(画像はビクターの昭和39年度版目録)
――青信号でわたっても 車は チョイチョイ つっこんでくるよ
まだ車社会に不慣れだったであろう当時の日本の世相を皮肉った、軽快で愉快な曲になっている。
木琴とサックスのイントロ、それに加えてベース?コントラバス?のシンプルな演奏で、子供向けのシングルらしいかわいい曲。A面B面ともに4番まである。
KODAMAのシンデレラでもわかるように、後年の声と聞き比べても違和感がないぐらい、既に声が完成している。
ところで、日本における交通事故は1955~60年の間に飛躍的に増加しており、1970年頃がピークになっている。事故自体は増え続けているものの、この当時の自動車保有台数に対する事故件数は交通戦争といわれるほど深刻な社会問題だったようだ。
▼のんびりとしたハワイアン的な曲調で、子守唄のような作品。アコーディオンの音が印象的である。
歌詞には、ミラ、アルタイル、アルデバラン、ヴェガ、アルゴル、アンドロメダという星の名前が登場する。1番から4番に進むにしたがって、ロマンティックな内容からどんどん現実的な内容になっていくところが面白い。
1961年に始まったばかりのアポロ計画に触発されて作られたのだろうか。
――だれかが とばしたロケットが 星を独占するために 星に到着したんかな 星がさびしく またたいた
資本主義と技術革新に邁進する世の中で、そして高度経済成長期の只中にあって、人間は大事なものを置きざりにしているのではないか、という訴えかけにも取れる。
▼この音源は現物を所持していません。
このレコードは国会図書館の新館1階にある音楽・映像資料室で聴くことができますが、資料の利用には許可申請が必要になります。相応の研究目的を書いて提出してください。
ただレコードが聴きたいというだけでは利用させてもらえません。